開催報告/第96回研究会「働きやすい病院づくりを考える~ハラスメント問題のない職場環境~」


今年もあと1か月となった師走の初日、12月1日(金)、第96回病院経営研究会を開催しました。
 
今回は「ハラスメント」の視点から働きやすい病院づくりについて考えることをテーマとして、さまざまな企業や医療機関で組織改善のファシリテーターとして介入し、パワハラ問題にも精通されている久保隆氏を講師に対話型の研修会を行いました。
 
 
 
パワーハラスメントの誤解

職場におけるさまざまな「ハラスメント」の中で、今回はパワーハラスメントに焦点をあてて学習をしました。
 
最初に、「パワーハラスメントとはいったいどんなことか?」という問いについて、参加者で対話をしました。
その中で、「受け取る側の気持ちの問題」「同じことを言っても受ける印象で違う」という意見があがりました。
 
それがハラスメントの一番の誤解です。

ハラスメントは受け取る側の気持ちの問題ではなく、あくまでも「行為の事実」で判断する とのことでした。
 
セクシャルハラスメントとは違い、パワーハラスメントは法律上の定義はありません(セクシャルハラスメントは男女雇用機会均等法で規定)。
そのため、「何に反しているのか?」という視点が難しいところとなります。
 
厚生労働省は就業規則の中に規定を盛り込むことを推奨しているとのことで、就業規則違反で問題提起することが一般的にとられる対応とのことでした。
 
 
 
 
3つの要件定義

では、何をもってパワーハラスメントと判断するのでしょうか?

厚生労働省は、

『職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・死体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。
 
要するに、「職場内の優位性」があるかどうか、「業務の適正な範囲」を超えているかどうか、精神的・身体的苦痛を与える行為、職場環境を悪化させる行為」であるかどうか、という3点が判断のポイントになるということです。
 
 

組織で仕事をすることとは
 
日々の業務の中で、「その仕事はやりたくない」「忙しいからできない」「やりたいのにやらせてもらえない」など、個人の希望と組織で求められる業務がそぐわないことは多々あります。

昨今の流れの中で、労働者側から、個人の要望が聞き入れられない、組織の方針に従わせる=ハラスメント、と表現する風潮も見られています。

しかし、「仕事」をどのように遂行していくかは、あくまでも上司の判断に委ねられます。
業務指導とハラスメントはまったく別の物になります。
 
病院組織では、業務遂行の責任がそれぞれ個人に任せられ、チーム、組織で働くことの視点が薄い傾向にあります。
業務評価が患者対応のみに寄りがちですが、組織で働くということは組織に貢献するということであるという理解を図る必要があります。

ハラスメント問題に触れるとき、とても大切なことは、「仕事とはどういうものか?」ということを、しっかり伝えておくことなのです。
 
 

多様な価値観を知ること
 
働きやすい病院づくりを考えるとき、知っておかなければならないことは、さまざまな価値観がある ということです。
価値観の違いがもとで職場風土が悪くなる、業務が進まなくなるということがあります。
価値観をすべて同じにすることはできませんが、同じ職場で働くならば、その価値観の共有や理解をしておくことはとても大切です。
 
それぞれの価値観に対し、「どうしてそう思うのか?」という、その価値観の背景や理由、その人の経験を共有することで、お互いに分かり合うことができ、協働の意識は生まれていきます。
 
組織はさまざまな価値観の集合体です。
いろんな価値観があるということを知ることから協働は生まれていきますが、仕事で動くときは個人よりも組織の価値観が優先されます。
 
 

対話形式の研修スタイル
 
今回の研修は、現場の事例を取り上げて、ハラスメントにあたるかどうか、3要件に照らしてみたらどうか、などを全員で考えるという対話形式で行いました。

対話の中で、「受け取り方ではなく行為の事実に対応することが大切」「明確な答えがないけれど、それも良い。これが答えだと言われると、逆に思考が狭まってしまう」「業務指導に憶病になる必要はないことがわかった」「注意するときは部下の行動に着目することが大切」など、さまざまな意見があがりました。
 
予定時間を超えて、濃く深い学び合いができました。
久保先生、しなやかなファシリテートをありがとうございました。
 
2017-12-13 | Posted in 定例研究会, 新着情報Comments Closed 

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