開催報告/第89回研究会「待ったなし!急性期医療制度改革の方向性」
2月2日(木)、第89回病院経営研究会を開催しました。
今回は「待ったなし 急性期医療制度改革の方向性~平成30年度診療報酬改定に向けた各病院の対応を問う~」というテーマで、一般社団法人日本血液製剤機構事業戦略部から谷澤正明氏をお招きし、今、すべての医療機関が不安視している「平成30年度診療報酬改定」について講演をいただきました。
今回のキーワードはやはり「2025年」
団塊の世代が後期高齢者となり、国民の5人に1人が高齢者となる…もはや誰もが知っている2025年問題。
過度な情報で不安感が煽られているこの事実に対して、日本全体が焦燥感にかられているのは、これまで日本が得意にしてきた「諸外国に学ぶ」ことができないからです。
世界中のどの国よりも先に飛び込む超超高齢社会。
扇動されている2025年問題はあくまでも医療需要のピーク、2035年に在宅介護需要のピークが訪れます。
谷澤氏によると、冷静にデータを見つめると、高齢者急増によるインフラ整備が急がれるのは都心部が中心で、地方ではすでに高齢化のピークは過ぎ、人口減が始まっている、そして、それぞれの地域によって、医療需要のピーク時期が大きく異なることが読み込めるとのことです。
そのため、地域に応じた医療構想・計画策定と、人口減の始まりに合わせて、これからどのようにダウンサイジングしていくのかということを、2025年を見据えて社会全体で考えていかなければならないとのことでした。
そして、もう一つのキーワードは「7:1看護」です。
平成30年度の診療報酬改定は、医療・介護の同時改定。2025年に向けた医療提供体制整備が本格的に着手されます。
平成18年に導入された、7:1看護。報酬の高いその基準をとる医療機関は2010年で約33万床に上がります。
前述の人口構造の変化と医療需要から、今後13:1の地域包括ケア病床への移行が促進されることに合わせて、7:1基準をとる医療機関にはより高度な医療提供が求められるとのことでした。
がん治療、救急、手術、この3点が急性期医療の必須事項になりますが、さらに大きなポイントがあげられました。
それは「認知症対策」です。
2015年、約500万人と言われている認知症患者、2025年には約670万人、2050年には約800万人になると予想されています。
がんや心疾患等高度医療を必要とする認知症患者も必然的に増加するでしょう。
これまでは急性期病棟で対応困難と言われていた認知症患者への対応が今後必須となり、「総合的かつ専門的な旧跡医療を24時間提供できる体制」を整えていく意向であるとのことでした。
地域包括ケアの視点で医療機関をとらえたとき、地域における急性期医療の分布という視点もポイントとなります。
急性期体制をとる病院が地域の中心部に集中し、患者の取り合いが起きている、その結果として稼働率が下がっているという現状もあるようです。
医療機関が倒産する地域包括ケア時代。
病院が地域にあるということは国の厚生水準を保つために書くことはできません。
しかし、過剰な急性期信仰の風潮の中、本当に必要な医療が必要なところへ提供されているでしょうか?
高齢社会で求められる病床機能は、おそらく急性期ではありません。
それぞれの地域に合わせて、「本当に必要な」医療の提供を社会全体で考えていかなければならない、その大きなターニングポイントが次回平成30年度診療報酬の改定であるということが理解できました。
1時間半の講演、一息もつかずに、まるで救急搬送後の救命処置のようなスピードでお話が展開されて行きました。
とても聴きごたえのある内容で、医療機関の具体的方策を考える大きな決断材料を提供していただけた貴重な時間となりました。