訪問サービス提供者の保護を考える


先日、神戸市で、在宅での看護や介護を担う訪問看護師、ホームヘルパーなどに対する、利用者やその家族からの暴力への対策を考える検討会が行われました。

訪問系サービス提供者は、基本的には1人で利用者の自宅を訪れます。
利用者の自宅が、「職場」となります。
そこで何が行われているのか? 虐待と同じように、見えないからこそ、その実態は明らかになりません。

訪問時の暴力として、利用者本人やその家族からの暴言、殴る、蹴るの暴行、抱きつきや猥褻な発言など深刻な問題があげられているうえに、「暴力を受けることも仕事」と認識される実態さえあるようです。

県内の訪問看護事業所を対象にした調査によると、回答した358人の半数が、身体的な暴力や言葉での侮辱などの「暴力」を受けた経験があると答えています。
さらに、神戸市看護大など調査によると、暴力を受けたと回答した180人のうち、振るわれた相手は利用者本人が71%、家族・親族が24%だったとのこと。


現場に携わらない人からすると、「お年寄りの力だったら勝てるでしょう」と思われるかもしれません。

これは大きな間違いです。

高齢であっても、片麻痺があっても、女性でも、暴力をふるうときの力は想像を超えるほど強いです。
無抵抗に防御するしかない場合、恐怖を伴い、受ける力はさらに強く感じられます。
さらに、暴力は力だけではありません。

高齢者の暴力の背景には、精神的な問題や、服薬の問題、孤独や家族内のトラブルなど、さまざまな問題が隠されています。
暴力のみに焦点を当てることはもちろんできませんし、総合的な支援が必要になります。

利用者からの暴力に対して、「ベテラン看護師だったらうまくかわせる」「信頼関係が築けていない証拠」「アプローチの仕方を考えたら?」などと言われてしまうと、訪問看護、介護士たちの孤独と不安は高まるばかりです。

 

暴力に対する対策は、まず法的措置や法制度の整備が必要です。
けれど、それだけでなく、心のケアも必要になることを覚えておいてください。
暴力・暴言を受けた看護師・介護士は傷ついていること、その恐怖と自己否定感を抱きながら、それでもなお頑張って訪問を行っていることを理解してください。
せめて同じ事業所で働く上司や同僚は、その人たちが良いケアを提供していることを信じて、恐怖をやわらげ、労わってあげてください。

訪問系サービスの質の向上と発展のために、必要な対策の一つです。

 

2017-01-31 | Posted in 新着情報, 組織と個人とキャリアComments Closed 

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