開催報告/第90回研究会「米国企業に学ぶ点数化しない「No Rating」
3月15日(水)、第90回病院経営研究会を開催しました。
今回は「米国企業に学ぶ点数化しない「No Rating」というテーマで、
生きがいラボ株式会社代表取締役 福留幸輔氏お招きし、
No Ratingをはじめとする人事評価に関する動向やさまざまな視点について講演をいただきました。
「No Rating」って何?
アメリカで生まれた新しい人事評価の仕組み「No Rating」は2015年に導入されました。
No Ratingでは、レイティング(評価)を行わない、期首目標設定を行わずマネージャーがプレイヤーと密にコミュニケーションをとりながら、状況ごとに目標設定・修正・フィードバックを行っていく、評価と給与を切り離すことを特徴にしています。
全米上位500社が総収入でランキングされる、フォーチュン500にランクされる企業において、昨年の6月時点では約20%が導入を開始しています。
外発的動機付けの限界
そもそも一般的には給与は報酬と受け取られています。
金銭的報酬(外発的動機づけ)は製造業などの労働形態では目に見える効果があります。しかし、知的生産性を求められる仕事においては、同じような効果は期待できません。金銭的報酬(外発的動機づけ)を目指して仕事をしていくと、それが減ったり、なくなったりしたときに不満を生み出します。
それだけでなく、仕事への興味や熱意を阻害していきます。 経済の停滞で、報酬を上げる続けることは難しい現状です。
今の、そしてこれからの社会では、「お金の力で働かせる」ことには限界があるのです。
組織の自律と個人の自律
必要なのは内発的動機づけです。
働きがいややりがい、仕事に対するよろこびという内発的動機づけは報酬に関係なく高まっていきます。
組織の評価軸にそって、高評価を得るために行動するのではなく、自分が組織にどんな貢献をするのか、どうやって自分自身の責任を果たしていくのかという内発的な行動から個人の成長は促進され、仕事の質は高まります。
No Ratingでは自分の能力を自分で評価し、出したい成果に対して、マネージャーとコミュニケーションをとりながらプロセスをたどり、結果を出していきます。評価をしない、ということではなく、成果を出すためのプロセスを重要視していきます。
組織が個人へ貢献し、個人が組織へ貢献する
この双方向の貢献が組織と個人の自律を生み出します。
コーチとしてのマネージャー
福留先生は給与は報酬ではなく、組織から自分に対する「投資」であると捉えるべきだと言われます。
実績や保有能力ではなく、自ら提示する組織に対する次期(未来)の貢献内容によって、投資額(報酬)を決めていくことが理想だと話されました。
プレイヤー(部下)とマネージャーのコミュニケーションを重要視する評価制度では、マネージャーの働きが重要視されます。マネージャーはリーダーではなくコーチのポジションをとり、指示ではなく支持の姿勢で成果がでるよう促していく働きが求められます。
人事評価制度は、混沌とした社会に合わせるように、今が混迷期だとのこと。
度重なる診療報酬の大改正で翻弄される医療機関においても、どのようなかたちで人を評価していくのか、解決策ははっきりと見つけられていません。
しかし、自律した個人が、自分の人生ビジョンを実現するため、生きがいを持って生き生き働き続ける組織を創っていく、そのツールの一つとなる人事評価の考え方として新しい視点を提供していただきました。