通所介護事業所見学~デイサービス絆~
病院経営研究会の見学事業。
今回は堺市にある『デイサービス絆』さんを見学させていただきました。
デイサービス絆さんは3年前に堺市の住宅街の中にオープンされました。
30名の定員がすぐにいっぱいになり、現在は稼働率100%で運営されているとのことです。
利用希望者が多いため、今年の4月に2つ目の事業所をオープン。
開設から半月程度で定員がいっぱいになったという超人気のデイサービスです。
絆さんの理念は
「元気いっぱいのスタッフが、理想の介護を全力で目指し、利用者の皆様に楽しく充実した絆の一日を提供する」こと。
今回の見学では「絆の一日」を見せていただきました。
1つでも多くの感情を持ってもらう
入ってすぐに聞こえてきたのは、スタッフさんと利用者さんの大きな声でした。
私たちが入ると、みなさんが一斉に入り口を向いて、「おいでやす~!」と大きな声で歓迎してくださいました。
京都から見学者が来るということで、京ことばでお出迎えしてくださいました。
ゆっくりするのは家でもできること、デイサービスに来ているからこそ得られる体験をしてもらう、
デイサービスに来ているからこそ感じられることをより多く提供する、という考えが、絆さんのベースにあります。
「デイサービス絆にいる間、1つでも多くの感情を利用者さんに持ってもらう」
というコンセプトのもとに、日々のプログラムが提供されています。
日常の一つ一つを特別に
絆さんには特別な機器や華美な設備はありません。
特別な講師を招いてプログラムが作られているわけではありません。
絆さんでされているのは、いつもある風景や日々の出来事を取り上げて、みんなで楽しく話し合うこと。
見学時のレクリエーションでは、
「今日のお昼ご飯に使われてた野菜は?」「どんな料理法?どんな味付けだった?」
「動物の種類をあげていこう!」「人気の動物ランキングをあててみよう!」
「パンダの耳は黒か白か?」
利用者さんの日々の出来事、ニュースで話題になっていること、季節の行事…etc
スタッフが前に立って、そういう些細な日常を取り上げ、全体をファシリテートしていきます。
利用者さん一人一人に声をかけ、発言をうながし、興味を引き立てていきます。
スタッフの一体感
レクリエーションの進行役は持ち回りでされているようです。
けれども、スタッフのみなさんも、前に立つことに長けている人ばかりではありません。
前に立つことが得意ではない人の当番の日は、周りのスタッフがサポート的に声をかけます。
1人が声をかけたら全員がその言葉をひろって盛り上げます。
利用者さんの小さな一言も必ず反応し、大きな意見として丁寧に対応します。
進行役だけでなく、周りのスタッフが一体となって、利用者さんを巻き込んで、レクリエーションの場を創り上げていかれていました。
スタッフの皆さんは、1日が終わるとクタクタになると言われていました。
絆さんは、デイサービスという雰囲気ではなく、まるで1つのアクティビティを見ているようでした。
毎日毎日がイベントで、利用者さんに楽しんでもらうために真剣に向き合ってエネルギーをあげていく。
スタッフの方々の熱量の高さが利用者さんにも伝わって、ともにモチベーションがあがっていく。
レクリエーションの時間に出されているエネルギーと些細な動きも見逃さない観察力をみていると、それも納得です。
また来たくなる場所
特に印象的だったのは、利用者さんの表情です。
要介護度が比較的高く、認知症で徘徊や感情の起伏が激しい方も多く受け入れているということですが、
誰1人、ウトウトと眠ることなく、みなさんとても穏やかで、大きな声で笑っておられました。
「がんばる」ことや「行かなあかん」ことではなくて、
とても気楽なんだけれど、すごく刺激的で、心が湧き立ってくる、なぜかとても居心地の良い場所。
「デイサービス」という場所ではなく、「また明日も絆さんのあの場に行きたいな」・・・。
絆さんで提供されていたのは、そんな独特の場所でした。
デイサービスの在り方が注目されて、講演依頼や全国からの見学希望が多く、
一時期は2日に1回は見学者がいるような状況になってしまい、
認知症の利用者さんが落ち着かれなくなることもあったので、
現在は見学をすべてストップされているそうです。
そんな中で、特別に今回の見学を受け入れていただきました。
お金をかけて特別な何かを入れるわけではなく、
普段の何気ないこと、日々の出来事を特別でおもしろいものに変えていく。
見せていただいた「絆の1日」は、スタッフのみなさんと利用者さんが一緒に創る、特別な日常でした。
見学を受け入れていただいたスタッフのみなさま、代表取締役の山本様、
ご紹介していただきました ゆとりぽっとの上野様、貴重なお時間をいただき、どうもありがとうございました。