人生の整理をしませんか?~生前整理の大切さ~
8月18日(金)サービス付き高齢者向け住宅トートイス京都桂川の地域交流サロンで「生前整理」をテーマにしたセミナーが開催されました。
あたたかな気持ちをお返しするために
今回、セミナーの講師を担当していただいたのは、京都で約20年間、ハウスクリーニング・家事代行事業の会社を経営されている紺村妙子氏です。
紺村氏は離婚を機にハウスクリーニング、家事代行事業を立ち上げられました。
仕事と子育てを両立していく中でたくさんの人から、数えられないくらいの温かい気持ちをいただき、その思いに応えるために、この事業を今まで継続してこられました。
ハウスクリーニングの仕事を行う中で、お客様から「年をとって掃除がおっくうになった」「片付けをする体力がなくなった」という声を多く聞くようになったとのことです。
そして、そんな声と並行して、高齢の方の成年後見人をされている司法書士さんたちから、遺品整理を依頼されることも多くなりました。
遺品整理はとにかく片付けることが大前提。故人の思い出も大切な物も、すべてが廃棄の対象になります。
生前整理は生きることを考えること
第三者にすべてを処分されてしまう遺品整理とは異なり、生前整理は自分自身で、自らの過去を整理することができます。
生前整理は目に見える物に留まりません。
やりたくてできていなかったこと、行きたくて行けていなかったところ、言いたくて口に出せなかった言葉、
思い返すと我慢していた気持ち…、ずっと触れずに背けていた人間関係の縺れ…
生前整理をするということは、自分の人生を振り返ること、叶えたかった自分に折り合いをつけること、
そして、自分の過去をきちんと見つめることで、また前を向いてこれからの人生に向き合うことなのだと、紺村氏は話されました。
物が無い時代に生きた人たちの思いを
「断捨離」という言葉が流行っているように、「整理」と聞くと、とにかく捨ててスッキリすればよいとも思いがちです。
しかし、紺村氏は、「生前整理はその人の人生を見ることだ」と言われます。
その人が大切にしてきたもの、その人が関わってきた社会、
整理をしていく中でその人の人生のかけらが垣間見えるとのことでした。
今、整理を依頼される高齢の方々が生きた時代。
戦中戦後と、食べるものも着るものも、ましてや贅沢品などというものがなかった時代。
そんな時代をはじまりとしてきた人たちが、たどり着き、やっと手にしたものを手放したくない気持ち、大切に思う心。
生前整理は「捨てる」ことが目的ではなく、その人の生き方に合わせた、その人の人生の「整理」が目的であること、
その人の人生に尊敬の念を持って対応しないことには、整理を行うことはできないとのことでした。
自分のことは自分でしか整理できない
紺村氏は、「整理は、ものに秘められた思い出に寄り添うこと、家族の絆を今一度見つめ直すこと」だと言われました。
何をどう整理するのか、何に折り合いをつけていくのか、その決断は自分にしかできません。
生前整理は、悔いのない人生を送るためのとても大切なプロセスの1つなのだということでしょう。
そして、整理をしながら、1対1で向き合って、その人の人生に触れていく…。
人生の終末期に関わる、医療とも介護ともちがう、けれどもとても必要で、専門的な関わりが求められる役割。
紺村氏の仕事は、1つのハウスクリーニングにとどまらず、これからの地域包括ケアの輪の中で、幅広く求められることになるでしょう。
短い時間の中で、実際の経験をもとにしたたくさんの事例を紹介していただきました。
終了後も、参加者のみなさんからたくさんの質問があがり、和気あいあいとした時間を過ごすことができました。