ソーシャルワークができるソーシャルワーカーはもういないのか?
「ソーシャルワークにおけるケースワークの位置づけについてどう考えますか?」
という質問に、臆せず回答できるソーシャルワーカーが、今どれだけ病院にいるでしょう?
病院機能の複雑化と在院日数の短縮をはじめとしたこの10年の医療情勢の変化の中で、ソーシャルワーカーの位置づけや求められる役割も大きく変わっていきました。地域包括ケアが取り上げられるようになり、より一層地域連携に焦点が当たるようになってきました。
今、医療機関でソーシャルワーカーに求められているのは、「ソーシャルワーク」ではなく、「地域連携」です。
「ソーシャルワーク」とは、社会的な不具合に対して幸福感や安全性を向上させ、 身体的・精神的な障害に対して心理社会的ケアを提供し、 社会的不公正に対して社会的なアプローチをしていく職業や学術分野のことを指します。ソーシャルワークでは個人と社会の関係性を、「人と状況の相互関連性」「状況内存在としての人」という表現をして、個人の問題と社会の問題は互いに影響し合っているという考え方をします。
「ソーシャルケースワーク」とは、個人が抱える生活面や社会環境での問題について、その人を取り巻く生活環境との関係性と重視しながら、さまざまな社会資源を活用して個人の力を向上させるようにアプローチしていくことです。
ソーシャルワークというのはケースワークありきのものです。ケースワークスキルのないソーシャルワーカーが行う支援はソーシャルワークではありません。
「地域連携」というのは、ソーシャルワークのアプローチの中の一つであって、「地域連携」ありきのソーシャルワークはありません。地域の病院にいるソーシャルワーカーと呼ばれている人たちの中で、「ソーシャルワーク」ができる人はどれくらいいるのでしょう?ソーシャルワークと地域連携の違いが分かる人さえ、どれくらいいるのか疑問です。
今、病院にいる「地域連携室」のソーシャルワーカーに求められている役割は、病院経営の円滑化のための地域連携であるように感じます。
そうであるならば、「ソーシャルワーク」を学問的に学んだ人材では期待に応えることができません。病院経営に役立てるため、「経営学」や「経済学」を学んだ「地域連携スタッフ」のほうが、よほど経営層の期待に沿う成果を上げてくれるのではないでしょうか?
ソーシャルワークのできるソーシャルワーカーはもういないのか? むしろ、もういらないのか?
地域包括ケア時代と言われる昨今、その本質は語られることなく見過ごされていくのでしょうね。