職場に潜む発達障害とパワーハラスメント
今回の産業精神保健学会で、わりと多く取り上げられた課題の一つは「発達障害」、もう一つは「パワーハラスメント」です。
休職→復職に至るには、リワークプログラムと呼ばれる復職プログラムを受けることが適切だと言われています。
2005年、厚生労働省が自殺対策の一環として復職支援プログラムを全国的に立ち上げました。
当時の自殺者数は32552人、10年後の2015年の自殺者数は24025人まで減っています。
うつやその他の精神疾患で休職に至る人たちの中に、わりと多くの割合で発達障害を疑われる人たちがいます。
「発達障害」の診断がついているわけではない、けれども、数々の経過および生活歴から障害が疑われる人たちです。
学会の中で、当事者の方の発表もありました。その方は、「うつになって休職した。診断書を出してもらったら、「発達障害」と書かれてあった。それが何かわからなかった」と言われていました。
発達障害の特性は連続的な分布をなしているといわれています。
診断基準は満たしていないけれど、発達障害の特性を持っている人は実はたくさん存在します。
特性の程度が軽度であれば、その人なりの対処の仕方を獲得してトラブルがないまま過ごすことができます。
けれども、ぎりぎりで適応を保っていた人の中には、就職や配置転換、上司の異動などによって、適応障害が顕在化して、メンタル不調を訴える場合があるのです。発達障害がベースにある人の復職支援はとても難しく、通常とは違うかたちのプログラムが必要です。
そして、一方で、発達障害の兆候がある人がパワハラの対象になりやすいというデータもあがっています。
パワーハラスメントとは、
同じ職場で働く者にちして、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことをいいます。
発達障害の特性を持つ人は、上司の言うことを素直に聞けない、場の空気が読めない、複数業務の同時遂行が難しい、スケジュール管理が苦手で締め切りを守れない…など、その特性の影響でパワハラのターゲットになりやすいという事実があります。
一方で、職場の上司の立場で言うと、発達障害という人に会ったことがない、特性などということの意味がわからない、という事実があります。
メンタルヘルスの考え方でいうと、職場の「個人」への配慮のみに集中し、全体の効率や働きやすさ=Happy が阻害されるという考え方は間違っています。
個人のHappy と チーム・組織のHappy がイコールになることが目標です。
1つの案としていえることは、
上司・管理者として、加害者にならないために、そしてチームワークを良くするために、メンタル不調者のみならず、コミュニケーションに疑問や課題がある部下やチームメンバーの様子を観察すること、そして知識の一つとして発達障害の特性を加味することが求められてきています。
発達障害の考え方を取り入れたメンタルヘルス研修、実施しています。
興味があれば、お問い合わせください。