地域包括ケアを実現させるためのケアラー支援(1)
「ケアラー」ということばを聞いたことがありますか?
「ケアラー」とは、ケアの必要な家族・近親者・友人などを無償でケアする人、いわゆる「介護者」のことです。
ケアの必要な、というのは、高齢者介護にとどまりません。
身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、ひきこもり、不登校、依存症、難病 など、さまざまなものが含まれます。
ケアラーとは、その人たちにとって必要なケアを「無償」でしている人のことを指します。
どれくらいのケアラーがいるのか?
日本国内で各種障害者手帳を所持している65歳未満の障害者の数は約7400万人だと言われています。総人口の約6%にあたります。
その人たちにかかわるケアラーの数は約1480万人。障害者数のほぼ2倍です。
これは、あくまでも「手帳を所持している」「65歳未満」の障害者とそこに関わるケアラーの数です。
手帳取得を拒否している人たち、手帳の対象にならない人たち、さらには65歳以上の要介護者を加えると、その数は膨大になります。
しかし、そのデータはまとまっていないどころか、その認識さえされていないのが現状です。
自分らしい生活の対象は…
ケアをしている人の中には、若者や稼働世代の人たちもたくさんいます。
介護のためにやむなく仕事を辞めたり、学業をあきらめる人もいます。
介護離職者0が謳われて、それに向けての取り組みも徐々に進んできているのでしょう。
人生の最期まで「自分らしい生活」を実現させるために、地域包括ケアシステムも整備されてきています。
要介護者にとって「自分らしい生活」が必要なように、ケアラーと呼ばれるケアの提供者にも「自分らしい生活」があるはずです。
ケアをする人が、自分の生活や将来を犠牲にしなければならないような状況で、健やかな社会が実現するとは思えません。
そして、ケアを必要としている人自身も、自分のために大切な人が人生を犠牲にすることは望まないでしょう。
「住み慣れた場所で自分らしい生活を送る」
地域包括ケアを実現させるために、そこに必ず存在するケアラーの支援も考えていかなければなりません。
●この記事を書いた人
丸谷香(まるたにかおり):ソーシャルワーカー/精神保健福祉士
独立型ソーシャルワーカーとして病院や施設で対人関係課題に取り組んでいます。