承認行動がもたらすもの
先日、「聴くちから」というテーマで市民講座を開催いたしました。
「聴く」ということに焦点をあて、3回シリーズで、各回さまざまなワークショップを取り入れて行う市民講座、この度が最後の回でした。
「聴く」ことの醍醐味は、非言語=ことば以外のメッセージにどれだけ耳をかたむけられるか、どれだけ読み取ることができるか、ということです。最終回は、非言語コミュニケーションをおこなったうえで、読み取ったことを承認としてアウトプットしていただくというワークを行いました。
「承認」、というと、ほめればよい、と捉えられがちです。もちろん、ほめることは承認行動の一つです。しかし、承認することと、ほめること には少し違いがみられます。
「ほめる」ことには、評価が加わります。自分の基準で相手を評価し、「よい」の判断の結果、ほめるという行動になります。これが続くと、相手は評価を得るために行動するようになってしまいます。
一方、「承認」するための言葉には、具体的な事実がはいります。相手のことをよく観察してはじめて出てくる言葉です。
今回の市民講座のワークでは、「あなた自身が観察したこと」をもとに、「具体的な事実」を伝えたうえで、「あなたの感情・気持ち」を表現していただきました。
承認の効果って?
承認されることで、以下のような効果がもたらされます。
(1)相手のモチベーションや行動エネルギーを高めることができる
(2)承認されることで自分自身の中に価値が高まり、さらに大きく伸びようとする。
(3)お互いの理解が深まり、信頼関係が強くなる
今回のワークのねらいは、モチベーションのアップと行動の促進です。
自分に関わった人から承認のことばをもらうことで起きる自分の感情の変化を内省していただきます。
その感情の変化は、自分がことばを送った相手にも起きていることを共有していただきます。
そこから、次の行動のための意欲が湧いてきます。
終了後のアンケートで、「非言語メッセージの重要性が理解できた」「普段、認めてもらえることがあまりないので、承認のことばをもらって温かい気持ちになれた」「人のよいところを認めあうことは相手だけじゃなく自分にとっても気分がよいものだと気づいた」 などの感想をいただきました。
相手のことばを聴くことの大切さ、非言語に目を向ける意識、具体的な表現の必要性を理解し、お互いがお互いを承認しあうことで円滑なコミュニケーションはうまれてきます。
●この記事を書いた人
丸谷香(まるたにかおり):ソーシャルワーカー/精神保健福祉士
独立型ソーシャルワーカーとして病院や施設で対人関係課題に取り組んでいます。