地域包括ケアを実現させるためのケアラー支援(3)
ヤングケアラーってご存知ですか?
ヤングケアラーとは、18歳未満のケアラーのことを指します。
家族にケアを要する人がいる場合に、そのケアのために、家事や家族の世話、介護、感情のサポートなど、通常大人がするようなケアの責任を引き受ける子どものことです。
「ケアが必要な人」とは、障害や病気のある両親や高齢の祖父母、兄弟姉妹などのことです。その数は、日本では推定17万人にのぼると言われています。ヤングケアラーとされる子どもたちは、ケアをすることで自分が役に立っていると感じます。
ケアをすることで、大人からの承認や評価が与えられるのです。
ヤングケアラーの問題
ヤングケアラーとされる子たちは、ケアをすることで自分の存在意義を感じます。
自分がしっかりすることで周囲が助かることが目に見えてわかるので、弱音を吐いたり、わがままを言ったりすることが難しくなります。
その子がケアを担い始めたときの年齢が低い場合、その子自身の心身の発達や人間関係の形成の仕方に大きな影響を与えます。
そして、それが長期間にわたるとき、勉強や選択する進路にも影響を与えることになります。
彼らはその悩みや苦しみをほとんど誰にも打ち明けられずにいます。
同級生や同年代の友だちに状況を理解してもらうのは難しいでしょう。学校の先生もおそらく同じです。
周りの大人たちは、彼らのケアラーの役割に期待をしています。
とても危険なことは、彼ら自身がそのしんどさに気づいていないということです。
しんどい、辛い、私のことを理解してほしい、そう口にすることに罪悪感を感じてしまうということです。
ヤングケアラー支援について
ヤングケアラーの支援の先進国はイギリスです。イギリスでは1980年代の終わりにすでにヤングケアラーの問題が注目されていました。その後、さまざまな調査が行われ、スクーリングシートや支援シートの開発も行われました。2015年のケアラー法の改正はヤングケアラーのために行われたと言われています。
イギリスでは、ケアラーがアセスメントを受ける権利が保障されています。
そして、ソーシャルワーカーをはじめとする多くの支援者に、「どんな福祉サービスも、子どもの過度なケア役割に依存してはいけない」という意識が根付いています。
日本では、ヤングケアラーの存在がやっと認識された段階です。NHKでも取り上げられるなど、少しずつ認知度が高まり、支援団体も生まれてきました。
すべての子どもが健やかな生活を送るために。
「介護事業」 とは別のところで活動が始まっています。
●この記事を書いた人
丸谷香(まるたにかおり):ソーシャルワーカー/精神保健福祉士
独立型ソーシャルワーカーとして病院や施設で対人関係課題に取り組んでいます。